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ハイステータス女子とのデート懐古編:恵比寿の変~Episode6

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""お父さんと仲良いの?""

 

気がついたら敬語ではなくなっていた。

 

""仲良いよ。どうして?""

 

occkhamだけではない。彼女もまたくだけた言葉を使っていた。完全に僕たちは打ち解けていた。

 

レストランに入って時間は1時間程経過していた。僕たちは横並びのテーブルに座っていた。少しうるさい印象を受けるほど店内はにぎわっていた。会話をよく聞こうとするが故に、僕たちの距離感も自然と近くなっていた。彼女からは、これでもかと言わんばかりの香水の匂いがしていたが、夏のせいなのかほんのりと汗の匂いがまじっていた。

 

""なんとなく。反抗期もなかったの?クソジジイとか言ったりとかなかったの?""

 

""そんなのなかったし、ずっと仲良かったよ。この前も一緒にドライブ行ったとこ。""

 

ふと視線を彼女の手元に移す。ネイルがしっかりと施されていた。女子力の象徴ネイル。何故そこまで彼女達はネイルを施すことにこだわるのだろうか。そもそも女子力とはなんなのだろう。'女子の力'。昔、'テレビの力'というふざけたTV番組があったことを思い出していた。普通の人間が、持ち合わせていない超能力を持ったエスパー達を番組に呼び、未解決事件をテレビの力を利用して解決していこうという趣旨の番組であった。だが、ふたをあけてみれば被害者の個人情報だけがどんどん公開されるだけで、事件等これっぽっちも解決されなかった記憶がある。"テレビの力"なんて一切ないということを逆に証明していたのである。案の定1年くらいで番組は終了したように記憶している。さて、このネイルはどうなのだろうか。'女子の力'を象徴としていると本当に言えるのだろうか。100年前を振り返れば、誰もネイルなどしていなかった。当時は、夫が家を出ている間家を守るのが女子の力だった。情勢も不安定、生活も不安定、先行きが不透明の中で、家を守るのは相当な精神力が必要だっただろう。それと比べれば現代の女子力は全く違ったものに変わってしまったのだ、と酔いが回った頭で考えていた。よくよく考えたら、ネイルこそが女子力なんだと、メディアの影響が強いのだろう。そう思うと、このネイルは女子力なんかじゃない。女子力という仮面をかぶった'テレビの力'そのものではないか、などと感慨にふけっていた。occkham の右手には、100年前にはなかったチリ産ワインが握られていた。

 

話を戻そう。

CAという職業柄ネイルなんかしていいのかなーー?と思いつつ、そんなことは聞かない。野暮な質問は会話に停滞感をうんでしまう。一通りの家族に関する質疑応答をお互いにして、仕事の話へと移った。

 

なんでも、JALとANAでは気色が違うようだ。ANAはきゃぴきゃぴ女子。狸顔で、目がくりっとした子が多いんだとか。JALはきつね顔でしっかりした子が多いんだとか。あまり飛行機を利用していない僕には全くその違いは分からなかったが、確かにANAはチャラそうな印象があるのは事実である。

 

さとみさんは、JALに在籍している。CA事情を色々と教えてくれた。華やかな世界であるという印象を持っている人は多いと思うが、実情としては女の園。色々とぎすぎすしているようだ。また、仕事内容も4勤2休と結構休みが多い印象ではあるが、毎回地上何千メートルも上空に飛び立ち、そしてまた戻ってくるわけだから、なかなかの体力を奪われるというわけだ。土方さんに匹敵するくらい大変だろう。また、クレーマーもなかなか多いとのことで精神的にもきついんだとか。

おもしろい話を聞いた。ファーストクラス担当になれば、髪型は'夜会巻き'という巻き方にしてもよいのだそう。それは、彼女達にとって一つのステータスなんだとか。

matome.naver.jp

 

 そういえば、ドラマやまとなでしこの松嶋菜々子は、夜会巻きだったのかなとか調べるとなかなか面白い。調べれば、普通に髪の毛をおろしていた。

 

やっぱり、この子は仕事にプライドを持っている。将来的にこうなりたいというビジョンを確かに持っている。そして、彼女も赤ワインを飲みながら、こんなことをocckhamに聞いてきた。

 

""でも、この仕事って、誰にでもできるというか。私が明日突然やめても誰かが次の日には穴埋めができちゃうんだよね。他のお仕事ってみんな自分じゃないと出来ない仕事を抱えていてすごいなって思う。occkhamさんの仕事だって、恐らく明日やめっちゃったら誰も代わりが出来ないから本当にすごいと思う""

 

彼女の頬は完全にワイン色に火照っていた。occkhamは少し考えてから答えた。

 

""そんなことないよ。野球だってポジジョンが決められていて、一人がやめちゃっても誰かが次の日には穴埋めして試合は出来る。でも、チームとしての総合力は下がるし試合にだって負けてしまうかもしれない。""

 

""CAって、サービス業だから勝ち負けを競ってるわけでもないし、多分代役でもお客様にとっては、そこまで受ける印象は変わらないんじゃないかなと思うの""

 

見事なカウンターパンチだった。occkhamは返す言葉がなかった。彼女はきっと、仕事中なにかトラブルがあって、上司に同様の言葉を言われたのだろう。そして、その回答を求めて仕事をしている。そして満たされない気持ちがあった。

きっと僕を試したわけではない。試したわけではないけど、自然と頼ってみたのである。そして、occkhamから納得が行く回答が得られなかった。ただそれだけだ。

 

彼女は少しばかりワインが残ったグラスをくるくると回しながら、そのワインの波を楽しんでいた。きっとアルファー波がでていたのだろう。

 

occkhamは額から奇妙な汗が出ている事に気付いた。その汗を拭うと、少し金属の色がしていた。完全に覆ってきたつもりであったメッキがはがれはじめていた。

 

次回につづく